AIで新卒採用が4割減る時代に、経営が問われていること
- Ryota Ogawa

- 2 日前
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採用削減は、変わり始めたサインだ
クボタが新卒採用を約4割削減、三菱電機は18%削減、九州電力は10%削減。
生成AI活用を推進する企業の人事担当者の約9割が「採用戦略を見直した」と回答し、55.4%が「採用人数を削減する」と答えている(株式会社アカリク調査、2025年)。
これらの記事を単に「大手がAIで効率化している話」として読むだけでは少し足りない。
採用削減は結果でしかない。削減の前段階として、AI導入を前提とした仕事のやり方と組織の変革に踏み込んだ企業が出てきている、ということだ。
「活用している」と「変わっている」は、別の話だ
多くの会社でAIの活用が始まっている。ツールを導入し、研修を行い、推進チームも立ち上げた。
だが、率直に問う。
1年前と比べて、現場の仕事のやり方は変わっているか。誰が何に集中し、何をAIに任せるか、その役割の線引きは定義され、機能しているか。
「活用している」と「変わっている」の間には大きな溝がある。多くの会社はまだその溝の手前にいる。 私が関わった会社の中でも、「AIを導入したけど、それほど変わらない」という声を聞くことがある。みなさんの会社の現場ではどうだろうか。
前提として押さえたいこと—本当のAI活用とは「人の役割を変える」変革だ
多くの会社がなぜこの溝の手前にいろうのだろうか。そこには根本的な誤解がある。
多くの会社がAI導入を「効率化プロジェクト」として扱っている。コストを下げ、スピードを上げる。それは間違いではないが、それだけでは組織は変わらない。
AIを本当に活用できる組織になるとは、人が何をやるかを根本から変えることだ。業務の一部を自動化するのではなく、人の仕事の定義そのものを更新することだ。これはツールの話ではなく、組織変革の話である。
そしてこれは、現場任せではできない変革だ。ITや推進チームに委ねて終わる話ではない。経営が設計し、経営が動かさなければ、変革は達成されないばかりか、始まりもしない。
動けていない本当の理由
「人の役割をどう変えるか」が設計されていない。これが、多くの会社が変われない本当の理由だ。
AIを入れても、人が何をやるかが変わらなければ、組織は変わらない。ツールだけが増え、既存の業務の上に新たな作業が乗る。多少の効率化が進んだところで、変化を感じられない。現場から「AIを使う意味がわからない」という声が上がるのはこの構造が原因だ。
役割の設計なき導入は変革ではなく、変革のないAI導入は極めて価値が低い。
人が担い続ける領域——その原理と代表例
では、AI時代に人は何を担うべきか。
私は、「正解がなく、価値判断・文脈・人間関係が絡む仕事」が人間の領域だと考えている。
AIは与えられた問いへの答えを出すのは得意だ。膨大なデータから最適解を導き、精度の高いアウトプットを高速で生成する。だが、「そもそも何を問うべきか」を定義することはできない。現在の枠組みごと問い直すことはできない。人と人の間に信頼を築き、組織の文化や利害を橋渡しすることはできない。
その代表が、次の3つだ。
問いをつくること。何を解くべきかを定義する行為。課題の設定そのものに価値がある時代に、最も希少な能力の一つになる。「そもそも何を問うべきか」は人の知識・経験からなる価値観をもって定義すべきものである。これは以前のブログ「イノベーションを起こすユーザー理解とは? 作り手という『人間』に着眼すると見える多様性の不可欠な役割」でも示している。
「今を越える」発想。現状の改善ではなく、現在の枠組みごと問い直す思考。AIは「今あるものの最適化」は得意だが、「まだないものを構想する」ことはできない。
関係と対話による合意形成。異なる価値観・利害・文化を持つ人間を動かし、同じ方向に向ける力。人間関係の構築、組織間の対話、信頼の醸成——時間をかけてしか育たない、人間固有の仕事だ。
これらはあくまで代表例だ。
自社においてどの領域が人の仕事なのか。その定義は、経営が自ら行わなければならない。
この原理を、あなたの会社の経営層は言語化しているか。「AIに任せる「人が担うべき仕事」の設計図を、誰かが描いているか。
あなたの会社では、人が担うべき領域はすでに定義されているだろうか?
変革を動かすのは、いつも経営の覚悟と実行設計だ。
AIを活用できる組織になることは、効率化の話ではなく、人の役割を再定義する変革の話だ。その設計図を描き、道筋をつけ、組織を動かすこと、それは経営にしかできない仕事であり、経営が今すぐ着手すべき仕事である。
2026年、AIエージェントが一般化され、世の中が急激に変化する。経営が今すぐ動くことが求められる。 本記事に関するお問い合わせは contact@culturelabs.co または ryota.ogawa@culturelabs.co までお気軽にどうぞ。
参考記事・資料・株式会社アカリク「生成AI時代の採用戦略緊急調査」(PR TIMES, 2025)・日本経済新聞「三菱商事、AI資格を管理職の昇格要件に 全社員必修へ」(2025年4月)・日本経済新聞「クボタ、全社員5万人にAI教育 マイクロソフトと提携」(2025年3月)・産経ニュース「就活戦線『売り手市場』に異変」(NewsPicks掲載)・野村総合研究所「生成AIと切り拓く日本の雇用と就業構造の未来」(知的資産創造 2026年2月号)


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